〈ぼく〉を美化するということ
あの、正直言ってモテたい。
ここでの「モテたい」は、なんだろう、「廊下を通るだけで周りにいる女子生徒からキャッ!///と囁かれるようなサッカー部のモテモテのイケメン」のような意味合いではない。
「ぼくがAさんに好意を持っていることが、向こうが別にぼくに好意を抱いていなくても、気持ち悪いとは思われず、多少は嬉しいと思ってもらえる」くらいの意味合いだ。
だから、「モテたい」というよりも、「相手からマイナス評価をくらわない」とでも言った方が近いのかもしれない。
そもそもぼくは、モテの主な要素である
・イケメンな顔
・高身長
・優しさ(表面的な優しさと、“ほんとうの”優しさについて考える必要があるが)
・話の面白さ etc...
のどれも現時点では持ち合わせていない。
だから、美化していく必要がある。
自然状態の無秩序な顔に少しばかりの秩序を、そしてその秩序を保つための方法を学ぶこと。イケメンにはなれなくても「気持ち悪い」とは思われない程度の清潔さを手に入れること。身長を◯ること(身長なんて、いわばイメージであり、周りの人間の解釈によってその人の身長が成り立っているのかもしれない)。「優しさ」とかいうよくわからない一般化された概念に関して女の子に迎合すること。話を興味深そうなものにするために脚色をすること...
迎合、脚色、美化。モテるための作業というのは、自分をねじ曲げることなのかな?
それはモテるため、人生初の彼女を得て幸せになりたいという夢を達成するための手段として、自分本来の姿から逸脱していても、割り切らないといけないのかな?
でも、それもなんか違う気がするんだ。
迎合とかそういう言葉を使っちゃうからなんかマイナスな意味になってしまうけど、そうじゃない気がするんだ。
わからん、わからん。
要は最終目標はなんだろうってことだ。
ぼくは「どういう状態」を目指しているんだろう。
「ぼくに彼女がいる状態そのもの、ぼくを規定してくれる異性がいる状態」
「ぼくが愛している彼女がいて、その人もなぜかぼくのことを愛している状態」
「ぼくの心と彼女の心が〈いま、1つになっている〉と確信している状態」
「ぼくと彼女が肉体的に一体化して、精神的にも肉体的にも幸せを感じている状態」
「〈世界にはいま、ぼくと彼女しかいない〉みたいな幻想世界に没入している状態」
「ぼくと彼女が手を繋いで、東京の街を物語の主人公のように歩いている状態」
あー、全部いいわ。
よすぎる。
〈妄想〉は楽しい。
とりあえず、多分、ぼくは恋人との内的なつながりを求めているんだと思う。
セックスして肉体的に1つになるより、精神的に、心的に、1つになってみたいって気がする。
これは心の内奥から湧き出てくるような、決して自己欺瞞なんかではない感情であり欲求だ。真に素直なものだ。
だから、ぼくは心の内奥にある何かは絶対美化しない。捻じ曲げない。でも、ぼくの心の内奥と、相手の心の内奥が1つになるような瞬間、その最終目標を達成するためには、その本質にヒビが入るようなこと以外は、する。うん。
せっかくその人と、内的に1つになれる余地があったのに、「ぼくの鼻毛が出ていた」ことで切られたらあまりにも勿体無い気がするから。
人と人が分かり合うことってなんなんだろう。